「最近トラちゃん、見ないねぇ。。。」
職場ネコのトラちゃんが消えた。
「見かけませんねぇ。。。」
「知らないです。。。」
・・・どこいったんだろう~?
「とーらちゃ~ん」
「じゃあさあ・・・500円だすから、行方不明のトラちゃんみつけて・・・」
「500円ですか・・・少ないですねぇ。外は吹雪ですよ。」
うーん・・・?
平田信、指名手配者に賭けられた懸賞金は、たしか500万円。
トラちゃんは凶悪犯人ではなく、行方不明職場ネコなのだから500円としたが、少ないというなら5000円?・・・いやいや、やっぱり500円。
「トラちゃんを最後に目撃したのは、12月の中旬ぐらいだったよねぇ。いつものように、前足をそろえて柿の木坂に、お行儀よく座っていた・・・」
「その後、トラちゃんは鼻水をだして元気がなかったので、確かー、Kさんがどうぶつ病院へ連れて行った・・・って話まで知ってる・・・」
「えっ・・・。それって自腹ですかー?」
「もちろん自腹でしょー」
「職場でお金出すと思う?・・・」
「そうですねー;;;」
「うーん。それ以降の足取りがつかめない・・・」
( トラちゃんが、今いなくなったら困る。なぜなら、わらべうたネコの実験途中だからである。春になったら、よい映像を撮ろうとひそかに計画していたのだ。 )
数日後、聞き込みを終えた捜査員が言った。
「トラちゃんの行方、わかりましたよ~。トラちゃんは、どうぶつ病院で診察を受けてから、そのまま Kさん宅で過ごしているらしいですよ。良かったですねぇ~。」
「じゃあ、Kさんが、トラちゃんの里親になってくれたってこと?・・・」
「さあ・・・それは、わかりません。 たぶん冬の間だけじゃないですかー。」
本当は、トラちゃんを見るたびに辛かった・・・。
夕方、北風が吹きぬける下駄箱ですれ違ったときは、胸が苦しくなった。何もしてあげれない自分に偽善的なものを感じた。野良から職場ネコになり、エサはあるが寝床はない。木枯らし吹く日も、嵐の夜も、寒さをこらえて一晩過ごさなければいけなかったのだから・・・・・・
トラちゃん、飼ってあげれなくてゴメン・・・。
そして、Kさん、本当にありがとう。
2012年1月16日 はらやま
トラちゃんの病状
1月18日、今日Kさんに聞いてみた。
「トラちゃん・・・お世話してくださっているんですかー?」
Kさんは病状と、連れて行くまでの経過を話してくれた。
・・・涙が出た。
トラちゃんは、胃に腫瘍ができているらしい。
心臓の上にも水が溜まっていて3回も抜いたらしい。
Kさんが仕事の時は、トラちゃんは、Kさんの帰りを炬燵の中でじっと待っているのだという。
「今まで野良ネコ(=職場ネコ)で、ずーっと我慢してきたんだからさあ、放っておけなかったんだよね・・・」
「ーありがとうございます・・・・・・。Kさん、本当にありがとうございます。」
私は、半年前の夏ごろからトラちゃんに声を掛けている。それまで、エサをあげている人くらいは知っていたが、トラちゃんが何歳なのか?どんな一日を過ごしているのか?誰が一番好きなのか?あまりにも知らなすぎた。トラちゃんの動画を撮ってから、トラちゃんに自分を印象づけようとしていたので、トラちゃんが気になり、いつでも探していたし、寒い冬をどう乗り越えるのかも心配するようになっていた。
トラちゃんには、2人の餌をやるお父さん(おじいちゃん)がいた。最近はもう1人餌やりに参加していたようだ。
それぞれ餌をやる場所が違っていて、それぞれある意味ライバルだった。時々、餌のことで喧嘩もしていた。でも、トラちゃんとそのお父さんたちとの関係は、住宅事情のせいか職場だけの関係で、餌は用意するが寝床というか巣は用意してくれなかった。仕事が終わるとトラちゃんを置いて帰って行った。
トラちゃんは、16歳という説がある。外見は毛がふさふさしているが、抱っこするとガリガリと痩せている。猫の16歳は、人間の80歳らしい・・・。
初めは、春になったらトラちゃんが戻ってくるだろうと予想していたが、どうやら難しそうだ。せめて、Kさんのお宅で元気を取り戻し、今までできなかった家猫の生活を楽しんでほしい。
私は、急に思いつき、Kさんに財布のなかにあった少しのお金をトラちゃんの治療費の足しにとお渡しして、何度も頭をさげてお礼をいったがまだ言い足りなかった。