「いい?知ってる?」
おじさんは何か急いでいる様子で
かなり短縮して確認した
「はい…」
(お尻と手が真っ黒になる温泉って
知ってますよ)、、、
チケットを自販機で買って
振り返ったとき
係員はすでに消え
あたりは静まり返っていた
辺りは
硫黄の臭いが
立ち込めている
恵の湯
誰一人いない
長野の山奥の温泉…
もしかしたら
さっきの係員は
タヌキかムジナかもしれない
うわっ
(振り返ったが、やはり誰もいない)
気のせいだ
やがて
湯につかる私に
平穏と
1/fゆらぎがやってきた
気分が良かった
ボヘミアの平原を渡る風でも
想像してみようかと思ったがー
よくわからない
そのとき
ニュース ZEROの曲が
遠くから
聴こえてきたような気がした
『夢の途中で目を覚まし
さっきまで鮮明だった世界
もう幻…』
真冬なのに
宇多田ヒカル
♪真夏の通り雨
だった
ここは自然に囲まれた
露天風呂のある温泉郷
(脱衣室にはドライヤーが
ないのでお気を付け下さい)